ゆうらいふエッセイ

自分らしく歩みぬいたK氏の人生を讃えて

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自分らしく歩みぬいたK氏の人生を讃えて

2023年1月永眠 享年74歳

 K氏とお会いしたのは、退院前の主治医からの病状説明に同席した時です。医師から「胃癌の末期で骨にも転移している。痛みを取るため放射線治療をしたが治療はもう限界。薬で痛みのコントロールも出来ている」と説明され、K氏は「家に帰りたい!」と、はっきりと自分の想いを伝えられました。それを受け同席していた妻と長男も「本人の望み通りにしたい」と応えられました。初対面でしたが、強い家族の絆に感銘しました。退院に向けて往診医・訪問看護・福祉用具利用を整えました。
 5日後退院し、自宅に戻りました。退院翌日に訪問した時は、アマチュア無線の機械の前に座り、無線で知り合った友人の事や無線についての話を意気揚々と語ってくれました。目がキラキラしていて、とても癌末期の状態とは思えないほど元気だったことが目に浮かびます。机には二人の孫娘さんの七五三の写真が何枚も並べらており、非常に孫娘さんを可愛がっていらっしゃると感じました。
その数日後に訪問した際には、ベッド上でひとり痛みに耐えている姿でした。声をかけると、か細い声で「大丈夫、息子に任せている・・・」と。痛みのコントロールの為主治医が頻回に訪問してくれていました。
 その後、お風呂が大好きだと聞いたので訪問入浴を調整し、2回入る事が出来ました。入浴後は痛みも落ち着き、気持ちよさそうに寝ていたと妻より聞き安堵しました。日ごとにいちごが1個食べれる程度に食事量は激減し、眠る時間が多くなっていきました。長男さんに「お父さんと話は出来ていますか」と尋ねると、「墓の事・樹木葬にして欲しいとの希望、お母さんを頼む等聴いている」と教えて下さいました。息使いが荒いとの連絡を受け伺うと、長男、妻、次男、次男のお嫁さん、そして二人の可愛いお孫さんがK氏の周囲を取り囲み、お孫さんは「おじいちゃん」と声をかけていました。その二日後、静かに息を引きとられました。

 グリーフケアで伺った際に、妻から長男が書いた葬儀のあいさつ文を見せて頂きました「自分の好きなように生きた人生、それが父の歩んだ道であったように思います。可愛い孫たちの存在は心の癒しになっていたようです。最期の日々を暖かな思い出が詰まった我が家で家族と共に過ごす事が出来ました。

やりたい事を全てやり切り『じゃあ、後は頼む❣』と私たちに託してくれました。別れは寂しいものですが、今日まで家族の傍にいてくれた父へ『ありがとう』の言葉を伝えて見送ります」と。

妻から、愛情一杯の子育て秘話を聴かせていただき胸が熱くなりました。強い意思を貫いたK氏と、それを揺るぐことなく支えた家族愛を学ばせて頂きました。深田ケアマネ記