ゆうらいふエッセイ

ご自分の意思を貫き、人生を閉じたT氏

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ご自分の意思を貫き、人生を閉じたT氏

2012年 99歳で永眠

随分前のこと、私がまだケアマネジャー2、3年目のことだったと思います。
Tさんは長男と長男のお嫁さんと3人で暮らしておられました。
99歳と高齢でしたがとてもお元気で、小さい体をちょこまかと動かし、自分のことは自分でされていました。お嫁さんとも良い関係で、お互いに自分たちの思いをきちんと伝え合っていたように思います。月日と共に少しずつ足腰が弱り、圧迫骨折をしたのをきっかけに、動くのも、排泄も手助けが必要になりました。老衰とは、加齢と共にあらゆる臓器の機能が徐々に落ちていき、自然に人生の最期である死に向かう状態を言います。食べる量が減り、眠る時間が増えていきます。口から食べるのが難しくなってくるので、希望すれば鼻からや胃ろうなどから栄養剤を入れることになります。しかし消化吸収をつかさどる機関の機能が落ちていますので、吸収できず、浮腫みの原因になったりします。Tさんは「口から食べられなくなれば食べられるだけで良い、最期は病院ではなくこの家で終わりたい」とはっきりと自分の意思を伝えてくれました。主治医とご家族、訪問看護、ケアマネなど多職種でTさんの意思を共有し最期の時間を過ごしました。

息が苦しくなりT氏本人が「救急車を呼んで病院に行きたい❣」と言った時、息子さん家族が「おばあちゃん病院に行っていいの?最期まで家で…と言ってたよね❣」と言われて、Tさんは我に返り、息子さんが主治医に連絡、その後ご自宅で息を引き取られました。

私は連絡を受け訪問した時にこの話をお嫁さんから聞きました。自身の意思を貫くTさんの強さと、Tさんの意思を支援する家族愛に感銘を受けました。

ケアマネジャーを始めて2,3年の私に、人生最期の生き切り方を教てくださったTさんとご家族に感謝し『本人最期の意思確認の大切さ』を学ばせて頂きました。
13年後ご縁があり、息子さん夫妻を訪問させていただきました。お嫁さんから「何かあった時に医師が来てくれるのか?が一番不安だった」と言われました。当時はまだ訪問する医師が少ない状況でしたが、最近は積極的に訪問する医師が増えて来ています。安心して在宅で過ごせる環境が年々整えられてきています。 ケアマネ深田記